愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

「あ」から始まる読書日記

 地元の図書館に、ちょうどいいぐらいの量の日本語の本が置かれているのに気がついた。ただどの本も自分から進んで手に取るかと言われればそうでもなさそうなものばかりでピンと来ない。多分150冊ぐらいあるのにひとつも興味がわかないのもどうかと思うが、わからなさすぎたので、本棚の端っこにあるのを2冊借りてみた。著者名であいうえお順に並べられていたので、こういうチョイスになった。

恋する音楽小説 (講談社文庫)

恋する音楽小説 (講談社文庫)

 

 阿川佐和子さんといえば雑誌のインタビューがお上手だとか、テレビに出ればちょっと天然キャピキャピしているところもありの、60代に見えない60代、というイメージしかなかった。でもこういう創作的なものも書くのだなぁ。

クラシック音楽の作曲家やオペラの登場人物を主人公に、阿川さんが妄想というか想像を膨らませて書いた小咄的なものが集められている。何でもラジオの音楽番組に使われたらしい。

モーツァルトの時代に、気になる女性を連れてデート風に外食できるような「レストラン」はあったのかな・・?とちょっと頭をかく部分もあるけれど、想像で描かれた、あくまでストーリーものだから重箱の隅的な歴史公証をするのはそれだけ野暮ってものでしょう。

電車の中で時間潰し的に読む感じかなぁ、でもこれをきっかけに、実際にその生涯をもっとちゃんと追ってみたいなと思った音楽家・芸術家がちらほら。紆余曲折有りまくった風のマリア・カラス、精神的に追い詰められたシューマン春の祭典を踊ったニジンスキー蝶々夫人を演じたオペラ歌手三浦環など。 

箱男 (新潮文庫)

箱男 (新潮文庫)

 

 内容も写真も構成も、なんだか非常に昭和な感じがする。よくわからないけどものすごい黒縁メガネをかけてタートルネックを着てタバコを吸いながら色々ムズカシイことを言いながら書いたんだろうなという感じがする。

内容は、ホームレスともちょっと違う(らしい)、ダンボールを被って生活する男の話なのだが、箱の中にある意味引きこもったり、覗き見的なことに快楽を感じたりしているが、こういうのはなんだかいかにも男の人が書きそうなことだなあという感じもする。

その実験的な構成や、誰が箱男なのか一瞬わからなくなる、ちょっと脳みそをつねられるような展開にむーんとなりならが読み進めていき、最後までうーん何だったんだろうという感じで読み終えた。

たいていこういう本にはあとがきや、なんだかよくわからない別の作家による解説がついていたりして、なんでこんないらんものを付ける必要があるんだろう、といつも思っていたのだが、この本はどんなあとがきがついているのか読みたくなった。が、ついていなかった。

でもWikipediaには必要以上にこの本についての解説や分析が載っていた。書いた本人もじゃんじゃんこの本の深い内容について喋っていた。それもむーん、と思いながら読んだ。

箱男になってみた、とダンボールを被って街を歩いてネットに載せている面白ライター系の人がいそうだよな、と思って調べてみたら本当に何人かいた。ただしちょっと箱を被ってウロウロするだけでは思い切りが足りない感じもしたので、ちゃんと中にものを吊るすとか全裸になるとかまでやってみて、本当に箱男の精神世界に入り込むぐらいまでにはまり込んでみてほしい。

どうもプラグマティックな頭ではいまのところこんな感想になってもうた。