愉快的陳家@阿拉米達島

ちょっと雑だが愉快な暮らし。サンフランシスコ・ベイエリア日記

 先祖をめぐる旅。


いつどうやって見つけたのかすっかり忘れてしまいましたが、数年前にイギリスBBCがやっている、Who Do You Think You Areという番組をオンラインで見つけて以来、すっかりこっそりはまっています。有名人のご先祖様について追跡調査するドキュメンタリー番組で、毎回イギリスの俳優、作家、司会者やニュースキャスター、その他著名人ひとりにスポットライトをあてて、その人の先祖について、色々な記録を掘り返しながら辿っていくのですが、その人の背景だけでなく、様々な歴史や系図学(Geneaology)調査の奥深さがわかるところが地味に面白い。


イギリスでは2004年からやっているこの番組、いろんな国でもスピンオフされていて、アメリカでも2年前からアメリカの有名人にスポットライトを当てたシリーズをNBCがやっています。このほかにもカナダやオーストラリアなんかでもやっているのですが、それぞれの国の歴史的・民族的背景や事情の違いが出てきて、そんな違いを見るのもこれまた面白い。


調査はだいたい、著名人が自分の両親や家族から聞いた話や、家に残っている記録などを手がかりにまず始まります。家族の記憶にある情報は、曾祖父母かその前ぐらいで止まっていたりすることが多い。おじいさんは自分のことをほとんど語らなかったので、どんな背景を持った人なのかそういえば全然知らない、などというケースも多い。そんな記憶と、あとは国勢調査の情報、出生・死亡・婚姻届を役所から、それから洗礼や結婚の記録を教会から探しだして、それを足がかりに家系図を作っていき、特にその中で興味深い人物がいれば、そこにスポットライトをあててさらにその人がどんな人生を送ったのか、探っていきます。その調査の過程も面白くてまるでミステリーを見ているようだし、そこから見える意外と知られていない歴史的事実とか、その当時の人々の暮らしぶりなどがわかるところがとにかく興味深い。


結構オンラインでいろんな人のエピソードを見ましたが、イギリスでは有名なんだろうけど、他の人から見たら誰?というような人の話でも、いろんなドラマがあるので見ていて飽きません。イギリスって島国だし、そこまで多様性があるのかなあなんて最初は思っていたけれど、それぞれの人達の背景はバラエティ豊かで、イギリスってこんな国だったんだ!と思うことも。


まず明確なのは、貧富の差。先祖が実はものすごいお金持ちで、ロンドンの郊外に自分の先祖が持っていたお屋敷を「発見」する人もあれば、ロンドンのスラム街だった地域に自分の先祖を見つける人もいます。特に産業革命に翻弄された人が多く、それまでは腕のいい職人だったのに、最後には貧困の最下層の人が入る施設で亡くなった、というケースも多し。特にロンドンのイーストエンド、Bethnal Greenという地名が出てくると、あ、これは・・・と見ていてわかるようになったほど。


それから宗教的背景。ユダヤ人の先祖を持つ人は、今も残るシナゴーグに先祖の名前を見つけ、中には自分の血をたどって中東にまで行き着いた人、ナチスの迫害を逃れてポーランドやドイツからイギリスに移った人々、そしてヒットラー以前の東ヨーロッパでのユダヤ人迫害を逃れてイギリスにやってきた先祖を見つける人も。


イギリス人とはいっても、フランスやドイツの血が入っている人も多く、自分の父親が大戦中、ドイツ人だということで町中から石を投げられ苦労したという事実を初めて知る人も。そしてアイルランド系の人は、自分の先祖の中にIRAの戦士を見つけたり。世界中に植民地を持つイギリスならではのエピソードも多く、自分の髪が黒く、少しエキゾチックに見えるのは、ラテン系の血が入っているからだとずっと思っていたのに、実は1700年代に先祖がインドに駐留しており、そこでインド人の奥さんを貰ったからだということが当時の記録からわかってビックリ!なんていう話も。アングロ・インディアンと呼ばれる、そのまま何百年もインドに残っているイギリス系のインド人もおり、そんな親戚を見つける人も。


軍人として東南アジアに駐留したおじいさんの名前が残っている公園を現地で見つけたり、おじいさんの死の真相を初めて知ってショックを受けたり、死んだと嘘ついて重婚してどちらの家族からも消えた謎のおじいさんを追ううちに、新たな親戚が見つかったり・・・と色んなパーソナルドラマもあるので、モノによっては本当に泣けたりもします。


アメリカ版の場合はやはり移民の国なので、さらにルーツを追うために先祖の国に飛んでさらに調査することも多いです。ヨーロッパの中でも、地の果てみたいな何もないところから来た人もいれば、先祖をたどったらベルサイユ宮殿にたどり着いちゃった人も(笑)。でもそこまでの追跡調査がなかなかできないのは、奴隷としてアメリカに連れてこられた祖先を持つアフリカン・アメリカンの人達。昔の記録をたどると、それこそ自分の祖先の名前が白人オーナーの所有物として記載されていたり、また所有主と奴隷の間にできた子供が先祖にいることも多いため、100%白人のいとこが見つかったり・・ということも。記録は辿ることができなくても、最後はDNAテストを受けて、自分の人種背景を調べたり(アメリカの黒人で100%アフリカ系、という人はまずいないんだそう)、アフリカのどこから来たかを調べ、その村を訪ねるエピソードもありました。でもいちばんぞくっとしたのが、自分の先祖の記録をたどって、アラバマのゴーストタウンのような小さな町に行ったところ、100年以上前から時間が止まってしまったような町並みが残っており、そこにある商店の看板から何から全てが、その人の先祖を奴隷として所有していた家族の苗字でうめつくされていた・・・というシーン。


なんだか書きだすとキリもとりとめもないですが、これ、日本でもやったら面白いんじゃないかなあ・・・。結構調査の過程で家族の秘密とか、ダークな歴史も明らかになることもありますが、出演している人はそれも全て受け止めつつ、泣いたり笑ったりして自分のルーツを明らかにしていくとても良い番組です。


BBC版で最初に見て面白かった、日本ではエルキュール・ポアロで有名なデビッド・スーシェさんの回。おフランス人ぽいラストネームを持つ彼、でもその背景は東欧にあった・・・→ビデオのリンク 注:複数のビデオに分割されてます


日本では知られているのかどうか、アメリカの司会者ジェリー・スプリンガー。お下劣なトークショーのホストとして有名なのですが、実はユダヤ系で家族はイギリス経由で迫害から逃げてきた、もとはイギリス人。迫害の手を逃れられなかった親戚たちの足あとを追うのですが、ナチスがこれだけ几帳面に収容したユダヤ人の記録を残していたのかと思うと、ゾッとします。最後に彼が収容所跡地ですすり泣いているシーンが、彼のイメージをすごく変えました。→ビデオのリンク


アメリカ版のオフィシャルページはこちら。ビデオもちょびっと載っています。こっちのほうが、日本でも知られた有名人が多く出ているのでとっつきやすいのかも。Sex and the Cityの女優ふたり、あとグウィネス・パルトロウとか、スパイク・リー、ライオネルリッチー、マーティン・シーンとか。


このほかにもYouTubeでWDYTYAまたはWho Do You Think You Areと検索すると、結構色々出てくるよ(スパイスガールズが同じタイトルの歌を歌っていたらしくそれも出てくるけど。笑)本家のイギリス版は結構長時間じっくり調べる感じなのに対し、アメリカ版はコマーシャルが多いし狭く浅くという感じ。そしていつも最後にはポジティブなエンディングにしたがるのはハリウッド病?カナダ版はエピソード数も少ないですが、ネイティブアメリカンの先祖が出てきたりしてまた違った感じ。オーストラリア版ではアボリジニの歴史や、先祖にオーストラリアに送られた流刑者がやっぱりいた!と喜んだり(?!)と面白い。ぜひご覧あれー。