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愉快的陳家@阿拉米達島

ちょっと雑だが愉快な暮らし。サンフランシスコ・ベイエリア日記

注文の多い地中海グルメクルージング

最近活字に飢えているようで、何でも手当たりしだいに読みたくて仕方がない。子供を寝かしつけながら図書館で借りた本を必死で読む毎日。しかしやはりどうしても食べ物関連の本にばかり食指が動いてしまうようだ。

注文の多い地中海グルメ・クルージング

注文の多い地中海グルメ・クルージング

イタリア料理など全く知らなかったアメリカ人シェフが、紆余曲折あってイタリア各地のリストランテで修行をし、その後ひょんなことからイタリア人スーパーお金持ち夫婦がもつヨット専属のシェフとしてひと夏を過ごすお話。レストランで料理を出すのとは違い、彼のクライアントはあくまでこのお金持ち夫妻。どんなに美味しいものを作ったとしても、この夫婦の好みに合ったものでなければ意味がない。そしてスーパーお金持ち夫妻がだした条件は、クルージングのあいだ毎日違うものを出すこと、クルージングで回る各地で調達できる新鮮な材料を使って季節感のある地元の料理を出すこと、パスタはあまり出すな、肉はダメで魚がメイン、パテ(といいつつ、次はそれがフォアグラを指すことが後でわかって大変なことに!)はたくさん積んでおくこと、いきなりのパーティーにも対応できるようにしておくこと、等々。


狭く蒸し暑くそして揺れるキッチンの中で、ぐちゃぐちゃになりながら100人のパーティーの料理を作ったり、寄港先で市場を開拓して材料を調達したり、そして雇い主の好みを探りながらメニューを考えたり・・・。さらにその上にクルーの食事の世話、そして手があいた時には甲板の仕事まで。読んでいるだけで体力を消耗しそうな業務内容。でも彼が時に失敗しながらも臨機応変に心と頭と筋肉を使って作る料理の数々とその記述は、過酷な環境にいて必ずしもハッピーな状態で料理をしているわけではないとはいえ、なんだか羨ましくなってしまうのだった。


英語のタイトルは「地中海の夏」というさっぱりしたものなのだけれど、邦題にあるようにオーナー夫妻はたしかに注文が多い。でも家を9軒持ち、ヨットは3艘持ち、週末には自家用ヘリでヨットまでやって来るほどビジネスで成功した夫妻としては、彼らが本の中で出してくる注文の数々は決して理不尽すぎるものでもないように思えた。これくらいはっきりものを言わないと、やっぱり家9軒とそのメンテナンスのためだけに80人も人を雇ったりできないだろうなぁと思う。そしてすごいのは、それだけ多くの人をスタッフとして抱えていても、そんなことはクルーの前では微塵も感じさせず、あたかもこのクルーだけが自分たちが信頼を置くスタッフであるかのように接すること。これって人を管理する上ですっごい大事なことだと思う。それが出来ているところがやはり成功する人って違うんだなぁと逆に関心してしまった。アメリカ人の金持ちアホセレブとはその振る舞いも全然ちがう。イタリア人だが完璧で美しいフランス語も操り、エレガントで緊張感があり、またクルーとの間では、ある意味王侯貴族的な主従関係を構築できてしまうところは、ヨーロッパのお金持ちはやっぱりスゲー!という感じであった。


イタリア人て食に関しては陳家の両親以上に保守的な人が多い。オーナーの主人もハムにアボカドが添えられていたことにこれはイタリア料理じゃないと文句を言う。地域での違いもすごいので、ナポリの人がローマの食べ物であるカルボナーラの話をしたことに著者が逆に驚いたりもしている。自分の地元の料理以外、イタリア料理以外は食べたくない、というような食に対する保守的な頑固さのようなものは、イタリアに行ったときも結構感じるものはあった。あんまりイタリア料理以外の選択肢も少なかった。友人ベッちゃんの従兄弟などは、そういう部分をイタリアは古い伝統を守るのは得意だけれど、新しいものを何も生み出していない、イノベーションもエキサイティングなアイデアも出てこない、若者としては非常にフラストレーションがたまることだと憤慨していたが、まあ旅行でたまに来る身としては、イタリアの未来や若者のことを全く考慮せずに言うと、そのほうがイタリアのイタリアである部分を存分に楽しめるから歓迎、なんて思ってしまう。


このシェフはアメリカの料理の鉄人マリオバターリの友達だそうで、序文は彼が書いている。彼も、著者も、そしてイタリア料理を極めたいと思っている勤勉な日本のシェフの多くが、無給不法滞在覚悟で結構イタリア各地のレストランで「修行」している。以前私が友人の結婚式で行ったイタリアの山奥村のリストランテにでさえ、日本人シェフが何人か修行で来ていたらしい。地方によって料理が全然違うので、各地を回って勉強する人も多いと思うけれど、この著者はこの他でもミラノのペックでも修行したそうだ、へー!そしてちょっと嬉しかったのが、彼が料理を志すきっかけになったのが、子供の時に見ていたグラハム・カーの「世界の料理ショー」だということ。私が小学生ぐらいの頃、テレビ東京で放送していたと思うのだけれど、世の中にこんなに面白い番組があるのか、と思って見ていた。また見たいなあ。


さて前置き(!)が長くなったが、料理をするシーンが多いこの本、巻末にはレシピも収められているので、家にあるものでできそうなものを週末に作ってみた。まずは、ツナのムース。著者曰く、同じものを二度出すなといったオーナー夫妻からのリクエストが多かったものだとか。


イタリア製の瓶詰めのツナを使った。これをフードプロセッサーにいれて、醤油とバルサミコ酢と合わせて混ぜる。イタリア料理を所望してやまなかったオーナー夫妻なのに、東洋のソースが入ったモノがお気に入りだったのはちょっと笑える。混ざったら、今度は細かく切った無塩バターをいれながらさらに混ぜて、ホイップ状にしていく。バターはツナ缶一瓶に大さじ3位入れた。そこにさらに、イギリスのダブルクリームを入れて混ぜる。少し冷蔵庫で冷やしておいて、食べるちょっと前に出しておく。


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セロリに付けて食べたが、濃厚、リッチ。バターにダブルクリームが入っているから当然だけれど、かなり癖になる。いわゆるバター醤油みたいな風味になるから、美味しくないわけがない。しかし入れたバターの分量を思うとそうそうたくさんは食べられないシロモノ。オードブルにはもってこい。多めにつくってしまい、美味しいのだけれどカロリーの観点から少し後悔したが、数日はもつらしいので、美味しいパンを買ってきて、サンドイッチにするのもいいかもしれない。ポットラックの時にまたつくろうかと思う。


そしてひよこ豆ルッコラのサラダ。子供の離乳食用にかってあったひよこ豆の水煮缶を供出することにする。家で料理するときはレシピを見ても、分量や手間を結構勝手に変えてしまったりすることも多いけれど、シェフがキッチンで料理をする様子を本で読んでいると、レシピに忠実に丁寧に再現したくなる。分量通りのニンニクと赤たまねぎをみじん切りにして、オリーブオイルと、海塩と混ぜ、味をひらかせるために10分置く。これがドレッシング。ひよこ豆は水洗いし、すりおろした人参、刻んだイタリアンパセリと合わせ、そこにドレッシングを混ぜあわせて、冷蔵庫で2−3時間時々かき混ぜながら冷やす。食べる直前にルッコラを入れる。サラダひとつに3時間も!普通だったらこんなレシピを見ても食べる直前に全部つくって混ぜて出してしまうのだけれど、やはり味をなじませたからか、シンプルな作りなのに定番にしたくなるくらい美味しいサラダができた。豆と人参、パセリの組み合わせが良くて、ルッコラはなくてもいいかな、とも思ったが多少は緑が必要かもしれない。


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さらに旦那が、世界一羨ましい職業を持つアンソニーボーデーンのTV番組No Reservationの「テクニーク編」で紹介されていたトマトソースを作ってくれた。レシピはこちら。トマトは湯剥きにして、手で種をとって、軽く潰してから火にかける。あとは塩コショウや赤唐辛子を加えるだけのシンプルなソース。パスタにあえるときにバジルやチーズを混ぜる。バターもちょっと入れる。レシピはスパゲッティだったが、ブカティーニが出てきた。シンプルだけれど、丁寧に作られていて絶対飽きない味。小さいチャンも、生まれてはじめてパスタを1本だけ食べた。


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普段バタバタしてほとんど料理が出来ていない今日この頃だけれど、たとえ月に1回でも、丁寧にご飯が作れるととても嬉しい(プレゼンテーションがいまいちですが)。また子供が大きくなったら一緒にこういうことが楽しめるようになるのかな。それも楽しみ。