チャイナタウンとダウンタウンの境目に、なんだか不思議な中華料理屋があるという。メニューは無く、その日に手に入る素材でシェフが何を作るか決める。完全予約制。
こちらがメニュー。
お品書きは無く、お値段のみ。値段が高いほど、出てくる量が多いというわけではなくて、料理に使う材料が違ってくるのだとか。一番高いのを頼むと、フカヒレでも出てくるのかしらん。
大皿にどかっ!さあ、みんな食え!円卓ぐるぐる、うわーい!というのが身上の中華料理において、「いろんなものを、ちょっとづつ」的なこの配分。韓国料理でいっぱい出てくるおかずのようでもあり、おせち料理のようでもあり。まずは前菜を、旦那と二人で、ちまちま、ちまちま。
完全予約制ということもあって、レストランも静か。私達のほかに、3組ほどのお客さんがいましたが、にぎやかな音楽がかかっているわけでもなく、ウェイターも一人。でもウェイターはジーンズはいた普通の兄ちゃんだし、レストランの内装も、以前ここに入っていた別の中華料理屋(手打ちの麺を出す美味しい店だったんだけど・・)のままだし、(値段以外は)高級を気取っているわけでもない。あくまで、シェフが良いと思うものを出す、というのが特徴のようです。
この後は一皿ずつ、いろんなものが登場。満漢全席状態です。
ウェイターのお兄ちゃんも、「これは魚です」「ナスデス」とわかりきったことしかいわないのだけれど、このあと出てきたものは「アワビと卵の白身を炒めたの」「大豆をかためたものと野菜の炒めたの」「えび」「湯葉と野菜をあわせたもの」「塩味で炒めたイカ」「瓜と野菜」「オレンジビーフ」「豆腐とお野菜」「豚肉をゆっくり煮たもの」「白身魚ガーリック風味」「ナスの甘辛いの」の11品。
一番美味しかったのは、アワビと卵の白身をいためたもの。そのほかのお料理も、すごくデリケートな味でした。アメリカで出てくる中華っていうと、なんとか醤とか、どろっとしたソースとかで素材をぐわーっとかいためちゃったり、なんとなく「とろみたっぷり」なものが多いのだけれど、ここのお料理は、どちらかというと塩ベースの味付けでさっぱり、繊細な感じ。素材の味が、結構生きてます。
お店のシェフが誰だかは知らないのですが、サンフランシスコに来て、お店のコンセプトとか、料理とか、ここまでシェフの個性をいい意味で押し付けられた(笑)中華料理屋は初めてだったかも。でも日本でもちょっと探せばあるだろうなあ、こういう味。
このお店、アメリカ人若者グルメが集まるウェブサイトなどでも結構話題に上っていて、客層も結構そういう感じの人が多かったです。ただし、何となく、こういう「コンセプト」がある店に行くと、期待度も高いし、なんとなく気負ってしまうところもあるんでしょうか・・・。結構批評してやるぜ!みたいな感じの人たちもいました。お店のお兄ちゃんがただ「メロン(瓜)です」といって持ってきたお料理、結構ビターな味でした。ニガウリかぁ、と思って食べていたら、別のテーブルにいたおねえちゃんが「味がおかしい、こんな味のはずがない、そして私はチャイニーズだ」といってこのお皿を返しちゃっていました。別のテーブルにいたアジア人のお姉ちゃんもウェイターに何かいっていた。これ、こういう味なのだと思ってぺろっと食べてしまった私達・・・。なにせウェイターがはっきりモノをいわないのでよくわかりませんでした。冬瓜と思って食べたら苦くてびっくり、とかなのか?
最初は量少な!ご飯も無しかい!とか思っていたのですが、次から次へと料理が来るので、最後のほうはうおー、またかい・・・という感じに。でもお肉を軟らかく煮たのはなかなか美味しくて、おなかがいっぱいなはずなのに、ついつい手がでてしまいました。
不思議というよりは、こだわりの中華料理屋といった感じでした。しかしなぜか最後の締めは甘辛いナスで、デザートは無し。いろんな料理が楽しめたのは良かったし、実際ひとつひとつのお料理はとても美味しかったです。ただフォーマット的に疲れたので、もう一回行きたいかどうかは・・・。普通にこの料理を出す普通のレストランだったらよかったのになあ。