愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

通勤の風景


シリコンバレーで働くようになってからは、毎日会社が出すバスで通勤している。今日はそんなバスの中で退屈なので日記を書いています。朝のサンフランシスコ市内は霧と風がすごくて、もうすぐ8月なのに!というくらい寒かったのだけれど、空港を抜けてバーリンゲームまで来ると雲が消えて青空になった。家と会社のある場所では気温差が激しいので、一応夏だけど、Tシャツの上にジャケットにマフラー姿で乗り込んでくる人たちもいる。


40人乗りぐらいのバスなのだけれど、ここで議論になるのが、バスの運転手がつけるエアコン。曇りの日でもかなりの勢いでエアコンを入れたりするので、もう中は冷蔵庫で凍え死にそうになったりする。まあ寒ければ運転手さんに言ってとめてもらえば良いのだけれど、結構アメリカ人はそれをいわずに我慢したりする。「アメリカ人は自己主張が強くて云々」というのは日本にいたコドモの頃から念仏のように言われてきたステレオタイプだけれど、結構実際そうでもなくて、寒いのにかなりやせ我慢している人は多い。時々「勇気のある人」が運転手さんにお願いするまでは、襟元をかき合わせたりして震えている。それでもって、後で会社のイントラネット上でオンラインで文句を言ったりするのである。ついでにアメリカ人は絶対謝らないというのもうそで、結構みんなよくSorryを使う。混んでる場所で、相手がぶつかってきて自分が悪くなくても結構反射的にSorryを使ったりする。今の若い人がそうなのか?カリフォルニアだからか?


毎日バスに乗っていると、通勤友達も出来たりするのだけれど、顔は知っているけれど名前は知らない、といったような感じの人がどんどん増えていく。そういう人たちには勝手にあだ名をつけてココロの中で呼んでいる。今日は、ものすごい変てこなドレッドヘアの男の子が乗っている。私は彼をパイン頭と呼んでいる。頭がパイナップルみたいで、ドレッドヘアが頭上から垂直に20センチぐらいにそびえたつ珍奇な髪型をしている。たいして似合ってもいない。多分普通の車に乗ったら天井に頭がひっかかるに違いない。だからバスに乗っているのか・・・


多分マレーシア出身だろうと思うベールをかぶった女の子は、前一緒に乗っていたバスが事故にあったときの話で盛り上がっておしゃべりをしたことがあるが、今日は手前の座席で寝ている。バスが急ブレーキをかけたとき、適当にはいていたサンダルが片方衝撃で脱げて、吹っ飛んでいってしまい探すのが大変だったそうな。ムスリムの女の子のベールはどうして絶対取れないのか、ハゲのユダヤ人のおっさんのヤマカ(つむじ・・・があったであろう場所を覆う小さな帽子)がどうして落ちないのかはいつも不思議だが、ムスリムの女の子のベールは大体頭頂のところをまちばりでとめている。頭にまちばりを突き刺しているわけでなくて、多分幾重に折りたたんであるベールをとめてある。でも裸のまち針が頭頂にあるというのは・・・たとえば複雑な転び方をしたときに自分に刺さったりしないだろうかと少し心配になる。でももしかしたら、いざというときにはちょっとした武器になるのかもしれない。まち針。


私の隣は、うちの会社にしては珍しく黒いスーツの上下を着た女の子が座ってコンピューターをいじっている。アイゼンハワーみたいな顔をした赤ちゃんの写真がコンピューターの壁紙にどーんと貼ってある。多分会社でプレゼンをするとき、プロジェクターにこの写真がどーんと映し出されて、ミーティングの参加者はお世辞でも「わー可愛い」といわなければならないのだろう・・・お気の毒なことである。ちなみにアメリカでは、可愛いものを見ると、「Awwwww」と言う。音階でいうと、ソファミレドシラソ・・・と一オクターブ下がっていく感じで言う。犬や赤ちゃん、そしてべたべたしているカップルに対してよく使う。日本だったら、べたべたカップルは「けっ」と言われそうだが、こちらはなんとなく「あーかわいいねえ、若いねえ」という感じでほほえましく見られるのである。結構人の幸せに寛容なのかもしれない?


今日はいないが、いつもバスが来るぎりぎりに走りこんできて、お化粧が脂と汗でてかてか光っている「てか子」というのもいる。彼女は会社のトイレでも良く鉢合わせるのだけれど、油紙をいつも使っている。それから昨日は、これをゲイといわずに何という、というくらい、言動が激しくくねくねゲイの中国系の男の子「カマ子」が隣に座った。カマ子は普段からいつもバスではiPodを聴いている。私は紀伊国屋で買った司馬遼太郎の本を一心不乱に読んでいたのだが、それを見るとカマ子はイヤホンからシャカシャカ音どころか、イヤホンがイヤホンの意味を成していないほど音楽の音量を上げ始めた。もれ聞こえる歌詞はどうやら日本語で、J-POPを聴いているらしい。iPodをいじるカマ子、J-POPになると音量があがる。これは「私日本のポップが好きなの〜!」というカマ子のアピールだったのか?しかしもれ聞こえてくる音に対してコメントをするというのもどうかと思い対応に困ってしまった。


この時間のバスの運転手は広東人のおじさんである。英語はうちのパパぐらいカタコトで、何かあるとすぐ「ソリソリー」と言う。おじさんが悪いわけではないことでもすぐにソリソリーというのでお気の毒になってしまう。でも、英語をよく理解せず、頑なに中国の殻に閉じこもり、社会的に外に出る機会を作らなかった陳家の両親に比べたら、こうやってカタコトの英語でも一生懸命コミュニケーションをとり、アメリカのバス会社にちゃんと就職して、とても偉いと思う。チャイニーズコミュニティだけをターゲットにした仕事よりも待遇も福利厚生もずっといいに違いない。


そんなことをつらつらと考えていたら会社につきました。さて働くぞ!