愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

くりんとん


会社のイベントにクリントン(夫のほう)がやってきてスピーチをしたのを聞いた。といっても一般大衆は入れないイベントだったので、会議室で生中継を見た。大統領を退いてからも、温暖化やら津波支援やら、いろんなことでご活躍のクリントンさん。


心臓のバイパス手術をしたからか、何だかんだいってももうお年だからか、その語り口調は以前と比べ、元気がないなぁという感じだった(かったるいイベントだなぁとか思って話していたのかも?!)。この間は奥さんのほうが会社に来たけど、彼女のほうがぱきぱきと、エネルギッシュな感じだったかも。それでも30分以上えんえんと色んなことを話していた。


一緒に見に行った同僚は口々に「やっぱり彼の話はインスパイヤされるよな。彼はすばらしいコミュニケーターだ!」「彼の話の最中に、モニカルインスキーのことなんて微塵も思い出さなかったよ。やっぱりクリントンは良い大統領だったよなぁ」などとうっとりしみじみしていた。私は彼の話を聞いていて、逆にうーん、次世代の子供たちは大変そうだ、そんな時代には子供は作らないほうがいいだろうか・・・なんて悲観的に考えてしまったりもしたのだけれど。


(私のまわりの)アメリカ人は概してクリントンが好きだ。「あの時代は良かったよな。やっぱりクリントンは良い大統領だったよな」とノスタルジーに浸る人が結構いる。私がアメリカに来たころクリントンが大統領で、ちょうどドットコム景気がすごくて、でも貧乏学生だった私はなーんの恩恵も受けなかった(涙)。でもこれまた極貧のルームメイトがリサイクルの箱から拾ってくるニューヨークタイムズを一緒に読んでいると、家の中の様子をインターネットで24時間放映して、それでものすごいお金をもうけた人の話とか、これが次世代のビジネスだ!なんて言っていたり、世の中からショッピングモールがなくなって、みんながバーチャルに買い物をする時代が来る!とか書いてあって、へぇぇ、こんなもんなのかいな?と思って読んでいたのを覚えている。自分自身も、ニューヨークで丁稚奉公をしたりして、世界の動きを垣間見た気になって、わくわく希望に満ちていたときでもあったし、ほんっとに能天気に前向きだった時代だったように思う。


社会人になってワシントンに移ったあとすぐ選挙があって、ブッシュが大統領になって、9・11があって、イラク戦争が始まって、普通に生活していても、何か苦々しい悲観的な気持ちが心の片隅に慢性的に残るようになった。そんなとき、何だかんだあったけど、そして9・11につながる布石はこの頃に敷かれてはいたのだろうけど、ある意味エイジ・オブ・イノセンスだったあの時代は、余計に美化されて、懐かしく感じてしまうのかもしれない。といって今彼が大統領に戻れたとしても、奥さんが大統領になったとしても、またそんな時代に戻れるわけではないのだけれど。