愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

ベトベン!ベトベン!


学校でサンフランシスコ・シンフォニーのタダ券をもらいました。「ベスト・オブ・ベートーベン」というコンサートで、演目はエグモント序曲、ピアノコンチェルト英雄、そして7番と超メジャーな曲ばかりを集めたプログラム。しかもタダ券なのにオケストラ席。ピアニストの指が良く見える場所。SFシンフォニーのホールには初めて行きましたが、ロビーではジャズを演奏していたり、こぢんまりしているけどなかなか良いホールでした。演奏中も客席の照明を全部落とさず、オーケストラの上の天井にはアクリルのオブジェ?が浮いていて、色々な色の照明が回っていたり、設置してあるパイプオルガンもモダンな感じ。音響も、ケネディセンターよりずっと好きな感じでした(ケネディは聞こえにくい)。


たいていはそうだと思うけれど、ピアノをやっていたときにさんざやらされたのがモーツァルトとベートーベンで、このお二人はお付き合いが長すぎるせいか、なんだか今更好きにもなれない、練習相手のような存在で、ベートーベンの交響曲も、特にフルートはいっつもパーパーパパ〜みたいな感じだし(?)、第九とかげんなりするし、みんなが騒ぐほど好きでもありませんでした。でもこのコンサートでベトベンさん、本当はこんなにカッコいいやつだったんだ!とものすごく見直しちゃった!


ピアニストは、なんとまだ25歳のキリル・ゲルシテインというロシア人のお兄ちゃん。小さい時ジャズを耳コピーし始めて、14歳でアメリカの音大に入り、やっぱりクラシックやる!と決めて、20歳までにはマスターまで取ってしまったすごい兄ちゃん。昔DCできいた年寄りの演奏とはもうエネルギーが違う。といってただフォルテ!フォルテ!というのではなくて、ピアニッシモの静寂はきりきりとこっちが息を詰めたくなるくらい。このコンチェルトが情感たっぷりに演奏されるのは今までに聞いたことがあったけれど、ベトベンが多分やりたかったこと、組み立てたかったものが透けて見えた!と思った演奏は初めてで、途中のやさしいメロディをきいていたら本当に「はうぅぅ〜」とうっとりしてしまいました。自分の演奏でいっぱいいっぱいというわけでもなく、オケストラが主旋律でピアノが伴奏っぽいフレーズの時には、オケストラの人たちに向き合って一緒に「あわせる」余裕もあったりして。ひとり、「かったりーなー」って顔で演奏していたビオラのおっちゃんが、演奏が進むにつれてどんどん気持ちが入っていって、途中でシアワセそうににたぁ〜っと微笑みながら演奏するのを見逃しませんでしたよ!「予測可能で単調」と自分では思いがちだったベトベンさん、ごめんなさい!誤解でした!こんなに感動できるなんて、初めて知りました・・・・。とてもよかった。


指揮者もアラステア・ウィリスという若手指揮者。やっぱりのだめを読んで以降、指揮者が何やってるのかすごく気になり始めたのですが、この人、ちょっと顔も猿っぽい人なのですが、気持ちが入ってくると、顔がどんどん「あい〜ん」になってきて、その顔を主題を演奏するパートの人たちに突き出したりするのです(笑)さらに7番の最終楽章ではエネルギーが爆発、バイオリンやチェロが4連符を引くところでは、「あいーん」の顔のまま、「お控えなすってぇ」のような、シャベルで穴掘り動作を連発。チェロは、そこらへんのスーパーでお買い物してそうなおばちゃん軍団だったのですが、人のよさそうな小さなおばちゃんの前に、あい〜ん顔を突き出して情熱的な穴掘り動作をするので、こっちもクスクス、おばちゃんたちも心なしか笑いをこらえて演奏しているように見えたのは気のせい・・・?でもやっぱり若い指揮者やピアニストの音楽は、エネルギーが違う!タダ券でこんなに素晴らしい演奏が聴けるとは思ってもいなかったので、200%満足して帰ってきました。