愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

ロンドン2016 ㊲ ロンドンで、子連れアフタヌーンティー。

ロンドン旅日記もそろそろ終わりに近づいてまいりました。

旅の終盤、レストランで働いた後はもうヘロヘロに疲れてしまい、最後の数日はあまり体が機能せず。

子供もサマーキャンプを終えて家にいたので、何かせねばと近場の公園で遊んだりしてごまかしたりしておりましたが、やっぱり母娘二人でアフタヌーンティーも行っておきたいよな、と子供が喜びそうなところに目星をつけて、今回2度目のアフタヌーンティーにも行ってきました。

Fitzrovia にあるサンダーソンホテルでやっているMad Hatter's Afternoon Tea。言うたら不思議の国のアリスに出てくる、いかれ帽子屋が主催するお茶会をテーマにしたアフタヌーンティーです。

このホテル、内装もちょっとモダン風オサレ。通された中庭には噴水があり、結構子供連れあり、ごっつい髭面の彼氏を連れたお姉ちゃんあり、若いお姉ちゃんのグループあり・・・、アフタヌーンティーって大概年配の人とアジア人ばっかりが行く勝手なイメージなんですが(w)結構いろんな客層が集まってるのが面白かったです。

こちらがメニュー。

ジェーンオースティンの小説「エマ」の古本に貼り付けてあるメニュー。

お皿やカップは全て白黒基調。カップはシマウマ柄でした。

Drink me, じゃないですけど、ポーション風の瓶に入ったお茶っぱ。この中から選びます。

瓶についている紐の色でもお茶の種類がわかるようになっていて、置いてあるトランプに説明が書いてあります。子供はジュース頼みました。

お茶じゃなくてカクテルなども頼めますが、甘い酒飲みながらサンドイッチやケーキをつまむの無理〜

塩系のものは、スモークサーモンやうずらの卵が入ったスコッチエッグ、クロックムッシュー、蟹のエクレア、きゅうりとクリームチーズのサンドイッチ。

そしてどーん。上の葉っぱは食べられませんが、赤いきのこのマシュマロ、青いのは青虫をかたどったマジパンみたいなの、てんとう虫の形のレッドベルベッドケーキ、人参ケーキ、うさぎの懐中時計の形をしたマカロン、トランプの兵士の形のクッキー、そしてスコーン。右側にちょいと見切れてるのは、アリスが飲んで大きくなったり小さくなったりしたポーション

甘いもの、どーん。

やっぱり当然ながら食べきれませんでしたので、だいぶお持ち帰りしました。甘いのより、サンドイッチとかだけの方が私も子供も好きかもなぁ。そういえば私も子供もそんなに甘いのいける口じゃなかったw

アフタヌーンティーよりアフタヌーン焼肉とかの方が子供はもっとフィーバーしたかもしれいない・・

でも雰囲気は十分堪能してまいりました。

このアフタヌーンティー、アリスのテーマじゃなくなったらこのお皿とか買い替えたりするんだろうか、などとぼんやり考えていたのですが、1年経った現在もまだまだアリスのお茶会は続いているようです。メニューはシーズンごとに変わったりする模様。もう十分備品の元は取れてるかw

https://www.morganshotelgroup.com/originals/originals-sanderson-london/eat-drink/mad-hatters-afternoon-teawww.morganshotelgroup.com

不思議の国のアリス、もちろん好きで子供の頃何度も読み返しましたが、続編の「鏡の国のアリス」の方が印象的で、特にそこに出てくる「ジャバウォックの詩」というのがすごく好きでした。

Twas brillig, and the slithy toves
Did gyre and gimble in the wabe;
All mimsy were the borogoves,
And the mome raths outgrabe.

「ときしもぶりにく、しねばいトーブが、くるくるじゃいれば、もながをきりれば、 すっぺらじめな、ポロドンキン、 ちからのピギミイふんだべく。」

このメチャクチャな言葉あそびが面白くて子供のときは覚えていたけれど、今原文で読んでみると、このルイスキャロルのナンセンスな英語の詩を、こんなにすぽっとはまる日本語に訳した訳者、すごい。これはもう、超名訳だと思います。

もう少し子供が大きくなったら、2冊とも買ってあげよう。って、私は日本語で読んだけど子供は原書を読んで育つのね・・w

ロンドン2016㊱ ミシュランスターレストランの厨房に立って見ての雑感

毎回旅行の際、現地で色々気になった小さなことを箇条書きにする「雑感覚え書きシリーズ」。自分の中では結構好きな観察日記シリーズです。そうだ、このタグを作っておこう。

ミシュラン一つ星レストランの厨房に立って働いてみるという夢のような経験、を実力ではなく金で解決という形で実現してみた今回のロンドン滞在。その中で色々印象的だったこと、気になったこと、面白かったこと、考えたことなど。

実際の経験を3回に分けてまとめた記事はこちらから

marichan.hatenablog.com

一つの材料、使う量が少なー。

一皿に、調理した食材を8種類も9種類も載せるので、実際に使う食材の量は意外と少ない。なので、冷蔵庫に入っている食材の量が意外と少ないのに驚いた。でも主婦的感覚で、つい一皿一皿ごっそり盛り付けしそうになるのを押さえるのが大変だったw

無駄な動き、もっとカットできるのかも

一流レストランに素人が立たせてもらって僭越ではあるけれど、プレーティングだけでももっと動きを効率化できるんじゃないかなと思った。とにかく盛り付ける食材がバラバラに保管されていて、それを出したりしまったりするのに毎回あっちこっちに行かないといけなくて難儀した。料理ごとに必要なアイテムをまとめて保管するとか、工夫とかあってもいいんじゃないかなーとも思った。

スクイーズボトルの呪いw

このレストランに限らず、色んなレストランの盛り付けに多用されるスクイーズボトル。

ソースで模様を描いたり、コントロールがしやすく便利だけれど、底にソースが固まってなかなか出てこないことが何度も何度も!

毎回ボトルの底を叩きまくり、ようやくできたと思うとまたボトルを元の場所にしまい、またソースが底に溜まるの繰り返し・・。これは時間が押している時かなりイラッとして、ついFワードが口をついたw

まだまだ知らないハーブの世界。

料理やデザートに添えられているハーブ類、アメリカでは聞いたことのないもの、見たことの無いようなものも多かった。ちょっと口に入れるとすごく良い匂いがしたり、適度な酸味があったり。メモ取る時間なくて残念。

Kitchen Awareness大事

厨房で役に立ちたければ、周囲の流れや他のシェフの状況を俯瞰的に見ることができる意識がとっても大事。これを、ビル・ビュッフォードさんはkitchen awareness と呼んでいた。これって日本語だと単に気配り、になっちゃうんだろうか。

状況に合わせて手を貸したりすることは厨房だけじゃなくていろんな面で大事なのは当然だけれど、限られた時間で物理的にわーっと物事を作り上げていく時には観察力、理解力に加えて瞬時の判断力、瞬発力も必要だなと思った。

何より体力勝負

とにかく長時間、熱いキッチンで立ちっぱなし、動き回りっぱなしの肉体労働。体力無いとやっていけない。シェフの人達が若いのも当然か。結構体を鍛えているシェフも多い。

今回は、旅の後半にこの予定を入れてしまったのが、一番の後悔。もっと体力のある前半に行って、ディナーシフトまで働きたかった。あああ今でもとても悔しい!

まだまだ男の世界?

このレストランのシェフはペイストリーシェフのひとり除いて全部男性。なのでやっぱり雰囲気は野郎の世界。後は洗い場に、多分ポルトガルかスペイン人のおばちゃんと、髪を編み込みにした、歴史映画でそれこそメイド役で出てきそうな感じの無口な女の子がいるのみ。

みんなが口汚くヤイヤイ色んなことを言うのを「あーハイハイ」みたいな感じで飄々と受け流していた。うむ。

でもみんないい人

みんな口は悪いが(って思ったほどでもなかったけど)根はいい人ばかり。特に厨房が忙しい雰囲気になってきた時にも驚かずに対応していたら、受け入れてくれたかなという感じもあった。「後ろどけ!」と最初に叫んだ時に「おおっ、いいねぇ」と実際言われたw

色々親切に教えてくれたり水を持ってきてくれたり、ちょっと時間がある時にはオレ日本で働いてみたい、なんて話をしたり。今もSNSで繋がってる人も。

包丁大事にしよう

レストラン備え付けの包丁はよく切れなかったが、みなさんマイ包丁はとても大事にして手入れも怠らない。備え付けの包丁も、私が使い終わった後他の器具と一緒に流しに突っ込もうとしたら怒られた。私もアメリカに戻ってから、包丁をもう少し大事に扱うようになりました。

料理への情熱と、アドレナリン

最後にスーシェフにどうだった、と聞かれて「期待していたよりもあんまりyellingがなかった」と言ったら「昔は怒鳴る人もいたけど、怒鳴ったところで物事が良くなるわけでもないからね、最近はあんまりそういうのはない」とのことだった。って、さっきちょっとふざけてたシェフ二人に黙りやがれ!とか胴間声で叫んでたじゃんwでもマルコピエールホワイトみたいに気に入らないからとチーズを壁に投げつけたり、というのはないのでしょうw

そしてお客さんが着始めてから、厨房の中に流れ始めたプレッシャーと独特の空気。みんなで一丸となって時間と戦いながら美味しいものを用意していく中で、出てくるアドレナリンがたまらんかった。という話をしたらニヤッと笑って、だからやめられないんだよね、だって。

仕事が終わってもとにかく興奮が冷めやらず、体は疲れているのに眠れなかった。翌朝も疲れすぎて昼まで起き上がれなかったけれど、頭の中では、またあの興奮を味わいたい・・・とあの厨房に戻りたい気分でいっぱいに。

毎日ジェットコースターに乗るみたいな感じだろうか。感覚としては、学生時代から今までやってきた、音楽や演劇で舞台に立った時の感覚にも似ていた。

シェフの中にはドラッグに走ってしまう人も実は結構いたりするけれど、これだけ長時間体を酷使したり精神が興奮したりすると、実際それをうまく管理するのは大変かもしれない。日本ではどうなんでしょう??

思えば料理はアメリカに来てから好きになってやるようになったし、学生時代のバイトでも飲食の経験が少ない。配膳とか厨房というのは、若いうちの仕事経験としては一番身近にあるものだとは思うけれど、学生時代に入ったバイト先(ディズニーランド近くのホテル)では、どっちかというとレトルトが多用されていたり、衛生面でもえぇ・・っということもあったりして、どちらかというとすっかり飲食業に幻滅してしまいその後近寄らずに過ごしてしまった。

なのでこうやって、純粋に料理に情熱を傾ける人達がいる場所があるということを知ったのは、ずっとずっと後のこと。もうちょっと早くに知っていればなあ、今更素人がプロの厨房に入ってワーキャー言うのとは別の世界が見えていたかもしれない。そこは自分が食わず嫌いで過ごしたことを反省。

でもこの歳になってもこういう経験ができたのは本当によかった。あと、英語も若いうちに勉強しておいて良かったw

このレストラン、厨房体験の他にも、普通のお料理教室もあります。レディングに行かれるお料理好きなかたにおすすめ!

あ、でもこういうのにちょっと行って、「ミシュランスターのレストランで修行」とか経歴に書いちゃだめですよ!経歴詐称はダメ、ゼッタイ!w

ロンドン2016 ㉟ 素人がミシュランスターレストランの厨房に立ってみた、その3

marichan.hatenablog.com

メインの料理もだいぶ落ち着いてきて、厨房がだいぶ落ち着いてきた矢先、ペイストリーセクションに呼び戻されたわたくし。

メインの厨房と別になっているペイストリーセクションは、流れる時間もメインのところとは少し違っていた。

デザートは最後の最後なので、みんなが落ち着く時間になると急に忙しくなる!

デザート担当は、名前を忘れてしまったパンも担当しているにいちゃんと、紅一点のお姉ちゃんのふたり。

火を使って暑い暑いメインの厨房に比べて、冷たいデザートも扱うこの厨房は涼しめで、流れる空気ものんびりしている。

私が盛り付け方を教えてもらったのは、私も前回お客として訪れた時にいただいた、こちらの「パフェ」など。

ご覧の通り、色々なアイテムが乗っているこのパフェ。

この写真では見えないけれど、まずパレットナイフでキャラメルソースをお皿に塗りつけて広げ、その上にクッキーみたいなのの粉になったのを散らす。

丸いのが「パフェ」で、生クリームなどを冷やし固めたものだけれど、アイスクリームというわけでもない不思議なもの。これをポン、と置き、チェリーのシャーベットはスプーン2本を使って形を整えながらスクープして置く。

チェリーソースをポン、ポン、と水玉状において、2種類のクッキーの砕いたものも並べ、私が一生懸命種を取ったチェリーも置く。

最後に、チョコレートのクラッカーを適当な形に割って、パフェにブスブス刺して安定させて出来上がり。

実に一皿に9アイテムが載っている!!

冷たいデザートだし、注文がきてからこの材料をいちいち出したりしまったりして盛り付けないといけない。

こういうキッチンのオーガナイズの方法は、そのシェフの個性が出るみたいなのだけれど、このキッチンも盛り付けに必要なアイテムがあちこちにとっ散らかって置いてあって難儀した。

散らかっている訳ではないんだけれど、お皿に載せるクラム、クラッカー、クッキーの割ったやつ、全部置いてある場所が別々、それもキッチンの右側と左側に置いてあったりして意味不明。

それで結構おしゃべりしながらのんびり盛り付けるので、時間がかかる。そういえば先週デザートでてくるまで結構待ったのを思い出した。

頼んだデザートが出てくる前に、デザートの前菜みたいなのも出てくるのでそれで時間に余裕がある、というのもあるとは思うけど・・。

という訳で、デザート盛り付け、全て終わったのは夕方4時。ハァ〜さすがに疲れました。

実はこの後、ディナーシフトもやっていく?と聞かれて、やる気満々だったのだけれど、終わって腰を下ろしたらもうぐったり。

この後さらに夜9時ぐらいまで働いて、そこからタクシーのって電車乗ってロンドン戻るのか・・と思ったらもう無理です〜、ということになってお仕事はこれでおしまい。

レストランはディナーが終わってもディープクリーニングもあるから、夜中の2時まで何かしらあるそう。翌日のパンの仕込みは夜10時からだって。

メインの厨房も、ランチが終わったら休憩という訳でもなく、チキンストックを作ったりといろいろ仕込み中。

ペイストリーの方ではお姉ちゃんがパンの兄ちゃんに「夜も長いし今のうちに外の空気を吸っておいで」と気遣ってたのが印象的。

この後、そういえば仕事中存在をすっかり忘れていたヘッドシェフ(そういえばいたっけ・・?!w)と、スーシェフと色々おしゃべりして、タクシー呼んでもらって帰路についたのでありました。

すごく疲れて、翌日は午後まで起き上がれなかったけれど、めちゃくちゃ楽しい経験だった。まさか自分が入れると思っていなかった、ハイエンドなレストランの厨房。シェフたちも、レストランのスタッフの皆さんもみんな優しくしてくれて、このまま翌日も戻って働きたい・・と思ったほどw いや、実際に働くとなると現実はそんなに甘くないのはわかっているけれど。

でも美味しいものを作る、という一つの目標に向かって、限られた時間の中でみんなが一丸となって働くことへの充実感というのがすごかった。仕事中に出たアドレナリンを鎮めるのがすごく大変だったのでした。

加工したら変なことになった、なんだこのセルフィーww

次回はレストランネタ最終回。実際に厨房に入ってみて気づいたこと面白かったことなどを。

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ヒヒの血!父の日!

なんだかものすごい猛暑になっているベイエリア
ここのところ36〜37度はアタリマエ〜。

そんな中で停電が起きたり、エアコンがぶち壊れて電気屋が大忙しだったりと、なかなかインフラが弱いところを露呈しておりますが、私の住むエリアは夜は涼しい風が吹いたり、そこまで恐ろしく暑くはなりませんでした。

でも暑いのには変わりなかったため、週末はほぼ水の中。

土曜日はフリモントのウォーターパークへ。

Aqua Adventure Waterpark

ここ官民経営ぽい感じのところで、市営なんですが、フリモント銀行とか、地元のスポンサーもお金だして作ったところらしい。

流れるプールに、ウォータースライダー4つ、小さい子用の遊具付き水遊び場などかなり充実。

食べ物持ち込み禁止で、中に売店あり。スナックや水は殺人的に暑かったので多少持っていきましたが。

わが島は海が近いからビーチもあるし、そこまで暑くならないからか、こういう施設は無いんですが、内陸のほうはほんっとに暑くなるから、こういう施設が結構色んなところにありますねぇ。

日曜日はバークレーの山の中にあるLake Anza

混んでいて駐車場は満杯。停めたところから歩かないとでしたが、その時点で溶けそうというか暑すぎて吐くかと思った。

特に車って乗ると暑いし、エアコンは異様に冷たいし、体調が悪くなる〜。

しかし冷たい湖の水に入ったら、そんな気持ち悪さはすっ飛んで、細胞がキュッと締まる感じに気持ちよかった。

外は暑いが水は冷たく、サウナと水風呂の交互浴みたいな感じに。

帰り道は、学校でプールに入った午後を思わせるようなけだるい気持ちよさがありました。

山から降りて父の日の家族飯は、広東料理やめようステルスキャンペーン実施中の義理兄の采配で、北京ダック!

って、ほとんど子供達ががーっと取ってがっついちゃいましたがw

むかーしむかし、今のロケーションになる前に行ったことがあるGreat China、今は内装もモダンになり、他の料理もなかなか良かったです。

ロンドン2016 ㉞ 素人がミシュランスターレストランの厨房に立ってみた、その2

marichan.hatenablog.com

仕込みが終わり、一人高級まかない飯を食べた後で厨房に戻ると、またカナッペ(前菜)セクションに呼び戻された。

このセクション担当は、ちょび髭のポルトガル人C君と、黒縁メガネの今時のワカモノT君、そして時々手伝いに下っ端19歳のS君が入る。

材料の準備が済んだ後、C君が色々な前菜のプレーティングの仕方を教えてくれた。まずステンレスの台の上にテーブルクロスを丁寧に折りたたんで置き(すべり止め)、その上に皿を並べる。

最初に教わったのは、お客さんがラウンジで待っている間にお出しするアミュゼの盛り付け。


(前週お客として食べに行ったときに撮った写真)

四角い箱になっている皿の中は玄米が敷いてある。

そこに人数分の、パリパリに焼いてある鶏の皮を置き、スクイーズボトルに入っている自家製マヨを水玉模様に置く。

その後、プラスチックの容器に入っている、卵の黄身の燻製をおろし金でおろして上からかける。

また台の下の引き出し冷蔵庫に入っている小さなゴートチーズのマカロンも人数分並べる。

セビーチェは、注文を受けてから、冷蔵庫に入っている材料をいちいち取り出し、作業台の上に置いてあるソースに混ぜて少し置いてから、れんげに盛り付ける。

セビーチェはライムの酸味で殺菌効果もあるんだよな・・と思い、注文が来てからちょちょっとマリネしてからじゃ遅いし味がしみない気もするし、最初に全部マリネして置いておいたらダメかと聞いたけれど、注文を受けてから混ぜろとのこと。ふーん。

アミュゼの他に、うなぎ(イギリスでもうなぎを食べる)のプレート、カモのプレート、サーモンのプレートなど、前菜メニューの中から数種類盛り付けを教えてもらった。

The restaurant is closed today but our Head Chef Tom is busy preparing a beautiful salmon dish for our VIPs ...

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当日写真を撮る余裕などほとんど全く無かった。これはお店のインスタから。

そうこうしているうちに、お客が入ってきたみたい、伝票の機械がジージー音を出して、注文を吐き出し始める。

アミュゼの四角い容器が私の前に3つほど並べられ、こっちは3人分、こっちは4人分、こっちは2人分作って!と早速丸投げされる。

お、おう・・・とさっき教えてもらった方法を反芻しながら鶏の皮を並べ、マカロンを並べる。マカロンを容器から出してみると、形が崩れてるのとか割れてるのとかクリームがズレてるのとか、結構使えないのが多い!!とりあえず壊れてるやつをいくつか廃棄。

盛り付けが終わると、その皿を配膳台に置く(下の写真の台・・なんて呼んでいいのかわかんないけど窓口みたいになってるところ)。

ここにはスーシェフが待ち構えていて、オーダーの確認、料理の進捗状況のチェック、出来た料理の内容チェックをする。

私が最初に持っていったアミュゼは、セビーチェの上に載ってるハーブが多すぎ、とちょっとハーブを取り除かれた。家庭料理の感覚で、セビーチェにしろ薬味にしろ、どうもどばっと山盛り置いてしまうのだけれど、こういうレストランではハーブの葉っぱは1〜2枚とか、本当にちょびっとしか使わない。

チェックが済むと、ウェイターがさっと持っていく。

そうこうしているうちに、食事のオーダーも入って来る。スーシェフが「オーダー、肉3、魚4・・・」と注文をずらずらと読み上げ始める。そうすると全員がビストロスマップみたいに「Oui~!!!」と叫ぶ。おおお、さすがおフレンチレストランや!

注文が入るたびにこれが繰り返され、蒸気と熱気がこもるキッチンから「うぃ〜!」の声があがるが、「ウィ、ムッシュ!」と歯切れよくというよりは、なんだか野球部の練習の時の声がけのような、滅茶苦茶威勢は良いが間延びした感じである。

その返事もなぜかだんだん「うぃ〜」ではなく、「うぃらぁ〜!」と、野球部がノックの練習でもする時に言いそうな意味不明な音声に近くなってくる。

ありゃなんだったんだろう・・・って、その時に聞け!って話であるが、次から次へと伝票がジリジリと出て来るので、本当にお喋りしている暇なぞ全く無かったのであった。

注文が入るとオーダー何人、ってスーシェフが読み上げ始めるので、その数字を聞いてアミュゼの盛り付けをだーっとやっていく。結局その日のお客さんのアミュゼ、8割位は私が並べたと思う。

とにかく慌ただしい雰囲気の中、自分もすごく集中してプレーティングをしていたみたいで、途中ものすごいトンネルビジョンになっていることに気がついた。こんな集中力、出産でいきんだ時以来じゃないだろうか・・・!

それにしてもキッチンは滅茶苦茶暑い。さらに私、ロンドンに観光客として滞在して既に2週間ちょっと、前半飛ばしすぎてロンドンの街を毎日何キロも歩き回っていたので、後半になって実はだいぶ疲れがたまっていた。キッチンに立っているとアドレナリンがどわーっと出てそんなことも忘れていたけれど、4時間ほど立ってふっと気がついたら頭がグラグラ・・・。

C君にみ、水・・・と訴えると、その後スパークリングウォーターの大瓶を何本も持ってきて飲ませてくれた。ぶっきらぼうっぽいけど実は優しいC君なのである。

アミュゼが一段落すると、前菜の盛り付けも手伝う。最初は頼まれた分をやっていたけれど、タルタルなどの盛り付け方はだいたい覚えたので、自分ができる料理のオーダーが読み上げられると勝手に皿を並べ、率先して仕事できるようになった。

前菜はどれも盛り付けに必要なアイテムが一皿に最低8種類ぐらいはある。そしてその材料が、キッチンのあちこちに点在している。

材料は料理別というより、食材(ハーブとか肉とか)別に格納されているので、一皿作るのにあっちこっちに行って材料を集めないといけない。

そして目指す引き出しや扉の前には他の人が立ちはだかって作業をしていたりするので、「ちょっと、右に3歩ずれて!」とか「後ろ通ります!」とかいちいち叫ぶ。

うなぎの皿には、ちょっと和風テイストも加える感じで、冷凍してあるワサビの根っこをおろし金でおろしてかけるのだけれど、厨房にはなぜかおろし金が一個しかない。別のメニューで卵の燻製をおろすのと共用である。それをあっちこっちで誰かが使って置いておくので、おろし金どこだ、貸せ、といちいち騒がないといけないw

ようやく奪還したおろし金で必死にワサビをゴリゴリおろしていたら、おろし金の部分が枠からぼこっとはずれて皿の上に落ちた。ギャー!「ああ、大丈夫、これよく外れるんだよね」ってもっといいやつ買えやー!

いちいちオーダーが来ると材料や器具をあちこちから出してはしまい、時にはアレは一体どこだ、右へどけ、左へ動けと叫び、なんだか無駄な動きが多い気もする。

自分の盛り付け担当料理が自然と決まってきたので、それに集中して忙しく立ち回るも、気分的にはずいぶん落ち着いてきて、淡々とこなせるようになってきた。一方、注文がどんどん入ってきて厨房内でのプレッシャーは逆にだんだん高まってくる。

スーシェフが「鴨、あと何分で出せる!サーモンは!」と叫び、C君が「あと3分!」と叫び返す。

気がつくとT君が後ろでブツブツFワードを言いながら、ガンガン台を蹴っている。おうおうどうしたと思えば、「ファックミー!ファックミー!」と自分に悪態をついているw

C君はといえば、下っ端のS君の両肩に手を置いて、「おい、俺を見ろ、俺を見ろ。いいか、落ち着くんだ」と、ボクシングのセコンドがボクサーに言い聞かせるように何か説教しているが、肝心のS君のほうはブツブツ口答えしつつも、表情は彼のほうが随分落ち着き払っている。逆にC君が何をそんなにストレスアウトしているのか、良くわからない。

この厨房にいるシェフ全員、多分みんな私より年下。ちょっとストレスアウトすると、とっても簡単にお口からFワードが飛び出してくる。でもアラフォーにもなると、色々なことに驚かなくなるのか、そこまでわーきゃー言わなくても、大丈夫じゃね?などと逆に思ってしまうww

自然とアミュゼ係になった私、お客さんにアミュゼが出されると、スーシェフが立ってる横の壁に張ってあるお客の予約リストと照らし合わせて、アミュゼ済みの印をつけていく。

印を付けるのにボールペン誰か持ってないのと叫ぶとT君がポケットからペンを5−6本ぞろぞろと出してきて1本貸してくれた。そこへC君が「なんでそんなにペン持ってるんだよお前〜」と茶々を入れ始めたところでスーシェフが雷一撃。「Stop chatting like fucking school girls! さっさと仕事にもどりやがれっ!!」あー怒られてやんの!私心の中で大爆笑ww

こんな感じでランチタイムのサービスは進んでいく。

私がさっき座ってまかないを食べたChef's Tableにも予約が入っていて、お客さんがキッチンの様子を見ながらランチしている。カナッペセクションは彼らからはよく見えない場所にあるのだけれど、いかにも素人然の私がキッチンからひょっこり出てきたのを見て(ジーンズにエプロン姿だしw)、ちょっとビックリした顔をしていたw

それにしてもこんなにプレッシャーいっぱいで忙しい厨房に素人を入れたり、それをお客さんに見せるテーブルを作ったりして、シェフには迷惑じゃないのかなぁと最初はちょっと思ったが、どうしてどうして、何となく彼らはそういうオーディエンスがあるのをちょっと楽しんでいる感じもする。

時間との闘いでもあるけれど、そんな中で働くとなんだか変なアドレナリンが出てちょっとハイになる。そして忙しく立ち回る厨房はある意味彼ら舞台。観客の目があろうとも、口の悪いのも止まらないw

それにしても、お客、一体何時までランチしてるんだ!注文がなかなか止まらない。でも3時が過ぎた頃、ようやくメインの厨房も静かになり始めて、一段落。やれやれ。

・・・と思ったら「終わったの?」とまたペイストリーセクションに連れて行かれた・・・えぇー、まだ終わんないのw

・・続く!!!!

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